
Cirrus SRシリーズの新規製造機体には標準装備であるGarmin G1000ですが、これは統合型アビオニクス(Integrated Avionics)の典型例です。
アビオニクスに関する前回部品ブログで触れたCNS(通信・航法・監視)の要素となる各機器が統合され、一つのシステムとなっています。
アビオニクスを統合する目的は、パイロットの操縦を助けるヒューマン・インターフェイスを提供することが一つとしてあります。
機器操作が容易になる分だけ飛行中の作業負荷(Work Load)が低減され、パイロットはフライト全体のマネジメントに振り向ける余力を得られることになります。
この「余力」がパイロットには大切です。なぜでしょうか?
航空機を飛ばすパイロットには、迅速に飛行の目的を達成するための効率性と、同時に気象条件・交通状況などをクリアして無事に運航を終えるまでの安全性の両立が求められます。
そのため、パイロットは運航中に生じる様々な状況を把握しつつ常にシンク・アヘッド(Think Ahead)でヘッドワーク(Head Work)を続けています。必要な操縦作業を適宜行いながら、常に作業負荷のかかる状況が継続します。
ですから、不測の緊急事態が発生した場合にも、冷静に対応できるだけの余力が大切なのです。
ここで少しだけパイロットの気持ちになって考えてみたいと思います。あなたはCirrus SR20を操縦しているパイロットになります。真っ暗な闇夜の空で長時間のナイトフライトをこなし空港に戻ってきました。ああ、やっと街の明かりが見えてきてもうじき着陸かと家路を急ぐ気持ちを心に抱いています。そしていよいよ最終着陸進入フェーズに入りました。と、ここで目前に迫る暗い滑走路上に動物がいたらどうしますか!?
この際に早期発見に役立つ装置があれば有効ですよね。
トップの画像に映っているモノクロの画は、Cirrus SRシリーズにオプションで装備できるEnhanced Vision System(EVS)の映像。このシステムを使えば、計器パネルのマルチファンクション・ディスプレイ(MFD)に赤外線表示で滑走路上にいる鹿が浮かびあがります。
鹿を視認したあなたは間髪を入れずゴーアラウンド。危険を早期発見・早期回避することができました。これはアビオニクスを活用することで操縦に余力が得られるというケースの一例です。話は初めに戻りますが、パイロットの操縦を助けるヒューマン・インターフェイスが得られるアビオニクスは飛行安全には有効です。
さて、今後も随時アビオニクスに関してAero Partsで紹介していきたいと思います。