
衝突事故の衝撃を緩和して搭乗者の身を守ってくれるエアバッグ。
自動車には当たり前に装備されていますが、小型飛行機にも、エアバッグシステムを搭載している機種があるのをご存知でしょうか?
自動車の場合、ステアリング・ホイールやダッシュボードにエアバッグが収納されていますよね。ところが小型機の場合は、細い操縦桿や、航空計器がたくさん並んだ計器盤にエアバッグを収納することはできません。
小型機の場合、エアバッグはシートベルトの中に格納されているのです。
現在実用化されているエアバッグ付きシートベルトの形状はふたつ。
ひとつは、セスナ社の172S型などに採用されている、自動車のシートベルトと同じ3点式のもの。腰回りを抑えるベルトにエアバッグが収納されています。
もうひとつは、シーラス社のSRシリーズなどに採用されている、4点式のシートベルト。片方のショルダー・ハーネスにエアバッグが収納されています。
4点式シートベルト | 3点式シートベルト | |
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エアバッグシステムが作動する基本的な仕組みは自動車と同じです。
小型機の場合、座席付近の床下に、電子モジュールアッセンブリー(EMA)と呼ばれる装置が取り付けられています。これには、エアバッグを展開するための信号を提供する加速度センサーが組み込まれており、一定以上の衝撃を感知すると、インフレータ・アッセンブリーに信号を送ってガスを放出させ、エアバッグを急速に膨張させます。その後、搭乗者の脱出の妨げにならないように、エアバッグは収縮します。
自動車と同じく、大きな事故から搭乗者を守るためのエアバッグシステムですから、飛行中の振動や、少々のハード・ランディングなど、通常のフライトで起こり得るような衝撃では作動しないようになっています。
飛行機の墜落事故というと、機体が完全にバラバラに…というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、小型機の場合は、不時着に成功して機体が十分原形をとどめるケースも多くあります。そのような場合、エアバッグのおかげで命が助かったり、怪我の程度が軽くなるなど、非常に有効に作用します。
ちなみに、シーラスSRシリーズの場合、緊急用パラシュート「CAPS」を正しく作動させれば、不時着時には、機体を3mの高さから落下させた場合と同程度の衝撃がかかります。その衝撃を吸収するのがエアバッグ、そしてアルミニウム製のハニカムコアを組み込んだ強化座席です。
エアバッグだけでなく、シーラス機のすべての安全機能を駆使すれば、生存が絶望的というイメージを持たれがちな墜落事故からでさえ、ほとんど無傷で生還できる可能性が高いのです!
2~30年前に製造された小型飛行機に乗ったことがある方なら想像がつくかと思いますが、自家用の小型飛行機は長らく、同時代の自家用車よりもずっとシンプルな機能しか搭載していませんでした。
しかし、近年では小型飛行機にも、高度な安全機能や、フライトを快適にする便利な機能が続々と追加されています。
自動車と同じくらい手軽に、安心して、空のドライブを楽しめる時代になりつつあるのかもしれませんね。
画像: NTSB - Airbag Performance in General Aviation Restraint Systems