
今回のブログでは、シーラスSRシリーズ(SR20/22/22T)に、2018年から新しく追加された機能をいくつかご紹介したいと思います。
まずはシーラス機最大の魅力である安全機能から。
オートレベル機能
シーラス機が搭載しているオートパイロット「ガーミンGFC700」は、基本的な自動操縦機能だけでなく、様々な安全機能が備わっています。
「ESP (Electronic Stability and Protection)」と呼ばれる自動リカバリー機能は、速度・ピッチ・バンクが危険な値になると、手動操縦中であってもオートパイロットが作動し、操縦桿を動かして安全な値までリカバーします。
また、夜間や雲の中などで空間識失調(航空機の姿勢がわからなくなる混乱状態)に陥ってしまった際には、「ブルーレベルボタン」という青いボタンを押せば、オートパイロットが作動して機体を水平飛行に戻してくれます。
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ブルーレベルボタン |
2018年から追加されたのは、その二つの機能を効果的に組み合わせた「オートレベル機能」です。
パイロットが40秒間のうち20秒以上、ESP機能が作動する基準値を超える操作をした場合、オートレベル機能が作動して、ブルーレベルボタンを押したときと同じように機体を水平飛行に戻します。
操縦桿を動かして姿勢を立て直そうとするのがパイロットの本能ですが、修正動作がオーバーになると、いつまでたっても姿勢が安定しません。ブルーレベルボタンは、日常のフライトでそこまで多用する機能ではないため、パニックになっているときは余計に、その存在を忘れがちです。
ボタンひとつで機体を水平飛行に戻すという便利な機能があるだけでなく、それを適切なタイミングで自動的に作動させる機能を備えることで、安全性が更に向上しました。
※ 訓練のため意図的に失速や急旋回を伴う操縦をする際には、自動リカバリー機能を不作動にすることも可能です
次にご紹介するのは、Cirrus Perspective +に追加された新たな機能です。
2017年、SRシリーズのコックピットシステムが一新され、ガーミン社の「G1000 NXi」を独自に改良した「Cirrus Perspective +」が導入されました。ハード・ソフト両方に新しい機能が追加され、ガーミンG1000ベースだった従来の「Cirrus Perspective」に比べて処理速度がおよそ10倍になりました。
2018年に追加された新機能は、Vision Jet を意識したものです。
Vision Jet は自家用パイロットによる操縦を前提に開発されたジェット機です。複雑なシステムを把握しやすいようにグラフィカルな表示を増やしたり、直感的に操作できるようタッチパネルを採用したりするなど、自家用パイロットが操縦しやすい工夫が随所に凝らされています。
それでもやはり、自家用の小型プロペラ機よりもはるかに多機能・高性能なVision Jetを安全に飛ばすためには、相応の学習と訓練が必要となります。
Vision Jet を購入されるお客さまの中には、SRシリーズのオーナーの方が多数いらっしゃいますので、少しでもスムーズな移行ができるように、SRシリーズのアビオニクスにもVision Jetと共通の機能を導入することが進められています。
そのような計画の下、今年追加された機能をご紹介します。
マルチパネルMFD機能
アプローチプレート、マップ、フライトプランを、MFD画面に同時に表示することができます。
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アプローチプレートとマップ |
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アプローチプレートとフライトプラン |
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アプローチプレート、フライトプラン、マップをすべて表示 |
Angle of Attack(AOA)表示機能
AOAシステムのデータに基づいて、PFD上の速度計に、最適なアプローチ速度の目安となる緑色の丸印を表示します。これは、Vision Jet やエアライン機の運航で使用する「Vref」と似たようなものです。
この機能は、防除氷装置を搭載したSR22・SR22Tでのみ使用できます(SR20は防除氷装置搭載不可)。防除氷装置を搭載した機体は、失速警報装置の一部として揚力センサーを搭載しており、これがAOA表示機能に必要なデータを提供するためです。
マルチパネルMFD機能やAOA表示機能は、もちろんVision Jet への移行を意識しない方にとっても、使いこなすことができればフライトがより快適になる便利機能です。エアラインパイロットを養成するフライトスクールでの訓練にも、活かすことができるかもしれませんね。
Garmin Flight Stream 510(オプション→標準装備)
2018年からは、各機種とも、これまでオプションだったいくつかの機能が標準装備されるようになりました。
そのうち、もっとも画期的な機能が「Garmin Flight Stream 510」です。
ガーミン社は、iPhone / iPad / Android向けに「Garmin Pilot」というアプリを提供しています。チャート、空港情報、気象情報などを閲覧できるほか、簡単な操作でフライトプランを作成することができます。このアプリは日本でも利用可能です。
Garmin Flight Stream 510は、オーディオパネルのBluetooth機能を使用して、機体のアビオニクスとGarmin Pilotアプリとの間で、フライトプランなどのデータのやり取りができる機能です。
ご自宅等で事前にフライトプランを作成しておけば、より効率的なフライトが可能になります。またフライト中にも、アプリによる簡単な操作で、フライトプランを修正することができます。
さらに、機体が記録しているフライトデータをGarmin Pilotアプリに送信することも可能です。飛行経路、高度、速度等、細かいデータを取得できるため、デブリーフィングの際などに活用できます。
この便利な機能が、2018年モデルからはSRシリーズの全機種に標準装備されることになりました!
以上が、2018年のSRシリーズの主な変更点です。
SRシリーズは、小型機という枠にとらわれず、より安全で快適にフライトができるよう進化を続けています。
今後もJGAS AVIATION BLOGブログでは、SRシリーズやVision Jetに関する様々なニュースをお伝えしてまいりますので、ご期待ください!