
2003年に始まったレッドブル・エアレースが、多くのファンに惜しまれつつ、2019シーズンをもってその歴史に幕を下ろすことになりました。
レッドブル・エアレースとは、国際航空連盟(FAI)公認の飛行機レース世界選手権です。レース仕様のプロペラ機に乗ったパイロット達が、超低空でスピードを競う大迫力の航空レースで、「世界最速のモータースポーツ」「空のF1」とも呼ばれます。
世界各地でレースが行われ、その順位に応じてポイントが加算されていき、シーズンを通じて最多ポイントを獲得したパイロットが総合優勝者「Red Bull Air Race World Champion」となります。
その最終戦の舞台に選ばれたのが、千葉県の幕張海浜公園です。
2015年に同地で日本初のレッドブル・エアレースが開催されました。
その翌年、日本人パイロットの室屋義秀選手が、千葉で悲願の初優勝を果たします。室屋選手は2017年の千葉大会でも優勝し、その年にはワールドチャンピオンにもなりました。日本ではなじみの薄かったレッドブル・エアレースの知名度と人気を高めたのは、間違いなく、室屋選手の功績と言えるでしょう。
また、こちらのブログでは、弊社が代理店を務めるアメリカの航空機メーカー「シーラス・エアクラフト社」がスポンサーになっているマイケル・グーリアン選手について、たびたびご紹介してきました。
今回もこの二人の活躍を中心にレポートしたいと思います。
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2019年9月7日・8日に開催された最終レースには、多くの観客が詰めかけました。決勝が行われる8日は台風の影響が心配されましたが、試合の開始時間を早めることで、無事にレースを行うことができました。
予選を8位で通過したマイケル・グーリアン選手。決勝第1レースの「Round of 14」では、総合ランキング2位のマット・ホール選手と対戦します。
先にフライトしたグーリアン選手のタイムは58.032秒。ペナルティもなく好タイムだったのですが、ホール選手が57.029秒のタイムでフィニッシュしたため、惜しくもここで敗退してしまいました。
総合9位でラストイヤーを終えたグーリアン選手は、湿度が高く、ペナルティを恐れてスピードを出せなかったことを悔いながらも、毎年最高の体験をさせてくれた千葉の素晴らしいファンには心から感謝の言葉を述べました。
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「Round of 14」のマイケル・グーリアン選手 |
さて、多くの観客が注目する室屋義秀選手。57.912秒の好タイムを出したものの、それを僅かに上回る57.897秒を記録したベン・マーフィー選手に敗れてしまいます。
しかし、これだけの好タイム。敗者の中で最もタイムが速かった1名は「Fastest Roser」と呼ばれ、次のレースに進むことができるので、観客はその後のレースを固唾を呑んで見守ります。
全てのレースを終えた結果、敗者の中で最もタイムが速かったのは室屋選手で、辛くも次のレースへの出場権を手にしました。
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「Round of 14」の室屋義秀選手 |
なお、次のレースの準備が整うまでのあいだ、海上自衛隊の救難飛行艇「US-2」、千葉市消防航空隊の消防ヘリコプター「おおとり」、海上自衛隊の曲技飛行チーム「WHITE ARROWS」が飛来し、観客の目を楽しませてくれました。
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海上自衛隊の救難飛行艇「US-2」 |
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千葉市消防航空隊の消防ヘリコプター「おおとり」 |
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海上自衛隊の曲技飛行チーム「WHITE ARROWS」 |
決勝第2レースの「Round of 8」で、フランソワ・ルボット選手と対戦した室屋選手は、先にフライトをして、57.895秒の好タイムを出します。
そして後攻のルボット選手は、ゲートを水平に通過しなかったことと、パイロンに接触してしまったことで、なんと5秒ものペナルティを受けてしまいました。
こうして、敗者復活枠で勝ち上がった室屋選手は、「Round of 8」では全選手の中で最速タイムを記録して、最終レース「Final 4」に駒を進めることになりました。
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「Round of 8」の室屋義秀選手 |
4人のパイロットが出揃い、いよいよ、今大会をもって幕を下ろすレッドブル・エアレースの最終レースが行われます。
にわかに風が強くなってきた影響か、最初にフライトしたピート・マクロード選手が、いきなりパイロンに接触し、ペナルティを受けてしまう波乱の展開。
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ピート・マクロード選手の機体と、倒れた奥のパイロン |
2番手の室屋選手は、ペナルティを受けない堅実なフライトで58.630秒の好タイムを出します。
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「Final 4」の室屋義秀選手 |
3番手のカービー・チャンブリス選手は59.601秒を記録。
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「Final 4」のカービー・チャンブリス選手 |
そして、最後にフライトしたマット・ホール選手のタイム1:00.052秒が発表された瞬間、会場からは大歓声が沸き起こりました!
日本で行われたレッドブル・エアレース最終戦で優勝したのは、「Round of 14」の敗者復活枠から勝ち上がった日本人パイロット、室屋義秀選手でした!レッドブル・エアレースのフィナーレを飾るにふさわしい最高のドラマです!
レッドブル・エアレース2019シーズンのワールドチャンピオンはマット・ホール選手。室屋選手は惜しくも1ポイント届かない2位でラストイヤーを終えました。
優勝回数は室屋選手のほうが上回っていましたが、レース後、室屋選手は「トータルで言えば、今年はマットのほうが実力が上だった」とコメントし、「長年一緒に戦ってきましたし、彼のことを嬉しく思っています」と、悲願のワールドチャンピオンの座を手にしたホール選手を称えました。
レッドブル・エアレースは2003年に始まり、千葉で初開催された2015年からは日本でも人気を博すようになりました。その歴史に幕を下ろしてしまうのはとても残念です。いつの日かまた、この素晴らしいレースが復活することを願ってやみません。