
2015年1月25日、アメリカ本土からハワイに向けて飛行していたシーラスSR22が、ハワイから400km離れた太平洋上で不時着水しました。
この機体は、アメリカからオーストラリアへ機体を運ぶフェリーフライトの途中で、寄港地であるハワイに向けて飛行中でした。
今回の事故では、パイロットが機体に装備された緊急用のパラシュートを開いたため、機体はゆっくりと着水。幸いにもパイロットはかすり傷で済み、すぐに付近の船に救助されました。
原因はまだ調査中ですが、燃料切れの可能性が高いとのこと。残燃料量からハワイに到達できないと考えたパイロットは、エンジン停止前に沿岸警備隊に連絡し、救助の要請を行っていました。
現場に到着したアメリカの沿岸警備隊が事故の様子を撮影しており、その映像が公開されました。
シーラスSRシリーズの機体には、CAPS (Cirrus Airframe Parachute System)と呼ばれる緊急用のパラシュートが標準装備されています。
今回のように燃料切れになったり、エンジンが故障したりして、不時着が避けられない場合、パイロットはコックピット上部にあるレバーを引きます。すると、機体の背中のほうから大きなパラシュートが飛び出し、機体をゆっくりと降下させるのです。
それでも多少の衝撃はありますが、SRシリーズの機体は、強化ボディやエアバッグで搭乗者を徹底して守る安全設計になっているため、怪我のリスクを最小限に抑えられます。
CAPSはこれまでに51回作動しており、104人の命を救っています。
飛行機の墜落事故というと、生存が絶望的というイメージがあるかもしれません。ですが、シーラスのSRシリーズの場合、適切にCAPSを作動させれば、事故からほとんど無傷の状態で生還できる可能性が高いのです。
パイロットと機体の所有者の方にはとても災難なことでしたが、パラシュートのおかげで大きな怪我を負った方がひとりもいなかったのは何よりの幸いでした。