
前回の整備ブログに引き続きエンジンオイルのお話です。
オイルはエンジンの血液といいましたが、まさにその通りで、人間ドッグで血液検査をするようにオイルの状態を調べることでエンジンの健康状態を診断することができます。
ピストン・エンジンの場合、定時点検のたびにオイルとフィルターの交換を行いますが、抜いた古いオイルはペーパーフィルターで濾して、フィルターは分解して異物の有無を調べます。
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フィルターを分解するとこんなジャバラ状に |
このとき、どんな異物が出てくるかでエンジン状態が把握できます。異物というのはスラッジと呼ばれる細かい砂状の物がほとんどで、大きく分けてカーボンとメタルの二つになります。
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この黒い粒々がスラッジ。これはまだ少ないほう |
カーボンとは・・・
オイルが高温になることで炭化したり、空燃比が濃い場合に発生するものです。 (空燃比が薄い場合も、不完全燃焼によりカーボンが発生することがあります)
スラッジのほとんどはカーボンであり、黒色で光沢が無く、磁石を近づけてもくっつかず、触るとボロッと崩れます。
カーボンは航空機のピストンエンジンに限らず、車のエンジンにも発生します。車好きの方で、エンジンを分解清掃等されたことのある方はカーボン除去の経験があるのではないでしょうか。
カーボンが多いほどエンジンの高出力状態が長くエンジンが高温だったことを示しています。これは異常ではありません。しかし、カーボンの欠片が異常に大きかったり、フィルターが詰まるほど量が多い場合は、オイルの潤滑がうまくいっていなかったり、オイルの冷却がされていない可能性を示しています。
メタルとは・・・
金属の破片のことで、鉄、アルミ、銅、ステンレス鋼などの種類があります。ピストン・エンジンは金属同士が擦れたりぶつかったりする構造が多いため、少しずつではありますが部品が削れたり欠けたりします。
メタル・スラッジは鉄の割合が多いため、磁石を近づけるとくっつき、大概は光沢があり色と形状で種類を判別します。
基本的には細かい砂状の場合が多いですが、エンジンに異常がある場合はメタル・スラッジの量が急激に増えたり大きな破片が複数出てきたりします。また、鉄以外の金属片が出てきた場合も要注意になります。
なぜ鉄以外が危ないかというと、アルミはシリンダー・ヘッドやアクセサリ・カバーなど削れることが無い部分に、銅はベアリングのコーティングに使われていては損傷してはならない部分です。普段、削れるはずのない部分が損傷しているということはその部分が異常摩耗していることを示しています。
クランクシャフト・ベアリングなどの場所には、多くのピストンエンジン同様にトリメタルが使用されています。これらの三層メッキは上記のような材質である場合が多いのです。
こういったプレーンのベアリング類は、エンジンがオーバースピードやオーバーブーストなどの過度に異常な運転をした場合、フレーク状の金属片として大量に剥がれてくるわけです。
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このような尖った形状やゴロッとしたもの出てきたら要注意!大きさと量によってはアウトに!! |
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この大きさの破片が出てきたら既に壊れています(参考) |
ピストン・エンジンは構造上、スラッジが出てしまうこともあり、マニュアルにも明確な判断基準がありません。なので怪しいと感じたらメーカーに問い合わせる他に確実な判断をする方法がありません。
オイル内から抽出された金属等の材質が滑油分析の結果から判明すると、経験的にどの部位の材質なのかが想像できることが多いので、内視鏡等で実際に確認することはあります。その場合、一目瞭然ですね。。。
ちなみにタービン・エンジンの場合はスラッジがほとんど出ない構造のうえ、少しでも異物が入ると壊れてしまうほど繊細に出来ているのでピストン・エンジンよりも厳格な基準と検査方法がとられています。
その検査はオイル分光分析検査(SOAP : spectrometric oil analysis program)と呼ばれるもので近年ではピストン・エンジンでもこの検査を取り入れる動きが広がっています。
今回はこの辺にしてオイル分光分析については次回「オイル③」でご紹介したいと思います。