
皆様こんにちは、鹿児島整備担当です。
冒頭からいきなりですが、一般によく言われるように、よい燃焼のためには「よい空気」・「よい燃料」・「よい火花」が」必要ですね。そのうちの「よい火花」について、今回は飛行機の点火系統について書かせて頂こうと思います。御付き合いくださいませ。
まずは構成部品を説明致します。
・マグネト×2
・イグニッション・ハーネス(シリンダーの数×2)
・スパーク・プラグ(シリンダーの数×2)
・イグニッション・スイッチ
となっております。
飛行機には車とは違い、バッテリー点火方式ではなく、エンジンのアクセサリーで駆動されるマグネトといった、オルタネーターやジェネレーターではないプラグを点火するためだけの発電機が2つ装備されており、これにより点火をしています。
なぜ、このような方式を取っているかと申しますと、飛行機は上空で電源系統が仮に機能喪失になってしまった場合でもエンジンだけは電源に関わりなく、継続して運転できるよう設計されているのです。
マグネトは各シリンダーの火花の元となる電気を発電し、ここで火花を飛ばすタイミングを調整しており、イグニッション・ハーネスを通り、スパーク・プラグにて火花を飛ばしています。
今回はライカミングエンジンの4シリンダーを例にとりあげてみましょう。
パイロットから見て左手に装着されている側のマグネトは
No.1、No.3の上及び、No.2、No.4の下のスパーク・プラグへ繋がっています。
パイロットから見て右手に装着されている側のマグネトは
No.1、No.3の下及び、No.2、No.4の上のスパーク・プラグへ繋がっています。
図で説明しますと下図のようになっております。図の上方が前方の意味です。
このように最悪LHのマグネトが故障してしまっても、RH側だけでも最悪エンジンは止まらない設計になっております。
ではどのような整備があるかと申しますと、
100時間毎
・スパーク・プラグを取外し、状態の点検(ここで燃料の濃さも確認できる)、清掃、ギャップの調整、プラグの取り付け位置の場所の入れ替え
・イグニッション・ハーネスの絶縁抵抗点検
・マグネトの外部タイミングの確認、調整
500時間毎
・マグネトを分解し点検⇒内部タイミング調整⇒外部タイミング調整
と大まかにはこのような点検があります。
※マグネトの交換に関しましては告示で定められている当該機に装備されているエンジンのTBO(限界使用時間)です。
では通常どおりエンジン運転を行いながら点検を行う試運転では、どのように確認しているかというと大きく2つです。
・マグネト接地点検
・マグネト・ドロップ点検
です
マグネト接地点検ではマグネトが正しく接地できているかの点検です。
手順としてはアイドル回転にし、イグニッション・キーを一瞬OFF位置にして再度BOTH位置にして点検します。
正しく接地できていない場合はOFF位置にしてもエンジンが止まらない状態になります。
マグネト・ドロップ点検は、機体のPOHに記載されている回転数(多くの機種では1700rpm~1800rpm)にセットし、イグニッション・キーをBOTH位置よりLH位置へその際の回転数の低下を確認します。RH位置においても同様に実施します。
規定値は機体毎で違いますが大体の機体ではMAX 150rpm or 100rpm 左右差75rpm or 50rpmです。
私は試運転ではこの点検が最も機体の状態が分かる点検だと思っています。
この点検では様々な状態確認ができます。
ドロップする際の振動の出方でも故障探求に使えます、破壊的な振動の場合は大体点火系統が多く、スムーズにドロップする際には燃料系統が濃い等の故障の原因が多いと感じます。
よく起こるドロップは破壊的な振動であり、エンジンを始動する際に燃料のオーバープライムによるスパーク・プラグのかぶりですかね。
その際には回転数を上げ(約2000rpm)でミクスチャーを薄くししばらく回し、再度点検すれば直ります。
直らない場合は間違えてもそのまま放置して飛んでしまわないようにして下さい・・・。
私が専門学校の学生時代では勢い余って、OFF位置にして焦って再度BOTH位置にした際にアフター・バーニングを起こした記憶がありますので気を付けて下さい。
また逆にその状態で勢い余ってSTART位置にしてしまった場合にはスターターが壊れますので合わせてお気を付けて下さい。
最後までお読みくださりありがとうございます、引き続き安全で確実な整備を実施して参りますので宜しくお願い致します。