
こんにちは、鹿児島の整備担当です。
今日は整備に関するちょっと専門的なお話をさせていただきます。
先日、耐空検査整備が完了し、納品させていただいたお客さまの機体で、S-TEC社製 System55オートパイロットの不具合がありました。今回は、そのS-TEC社製System55のオートパイロット不具合についてご紹介したいと思います。
お客さまがオートパイロットを使用して、旋回した際に「バンク角が深かったり浅かったりするような気がする」というレポートからすべては始まりました。
飛行機は機械ものですから、何らかの不具合が発生することがあります。
地上で我々整備士が発見することもあれば、上空でパイロットが不具合に気がつくこともあります。
不具合が発生した場合、まず整備士はトラブルシューティング(故障探求)を実施します。その不具合が発生した原因を探る作業です。
では、オートパイロット使用時にバンク角が不安定という不具合は何に起因して発生するのか…?
オートパイロットコンピューターが調子悪いのか、サーボが調子悪いのか、はたまた他に原因があるのか?マニュアルの配線図等を参照しながら、原因を探っていきます。
もちろん、整備士それぞれのこれまでの経験が生きてくる場合も数多くあります。
原因として考えられる全ての部品を修理に出せば話は早いのですが、その分、お金がたくさんかかってしまいます。的確なトラブルシューティングがお客さまの整備費用を低減させるのです。
S-TEC System55のオートパイロットはバンク角度のシグナルをTurn Coordinatorから受けており、実はこれがよく故障します。Turn Coordinatorからの出力が誤っている場合、オートパイロット作動中、旋回のバンク角が深かったり、HDGバグへの追従が悪くなったりといった症状が現れます。
また、動翼を動かすサーボはアナログの電気モーターであり、モーターのブラシが汚れると、前述と同様にバンク角が深くなるなどの症状が発生します。
ただ、私はブラシの汚れだけでバンク角が異常になるほどの症状をみたことがなく、むしろTurn Coordinatorの誤動作のほうが多い気がします。
この機体は、Turn Coordinatorをオーバーホールしたところ、無事に症状が治りました。
整備士はオートパイロットに限らず、不具合発生時にはマニュアルや過去の経験を基に整備を実施しています。
今後とも、鹿児島航空機整備センターをよろしくお願いいたします。