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米国REDBIRD社のFTDを導入します(その2)

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米国REDBIRD社のFTDを導入します(その2)

みなさん、こんにちは。運航本部長の山口です。今回はFTD導入に関する話題の連載2回目として、民間航空操縦士訓練学校が導入する操縦訓練装置(フライトトレーニング・デバイス/Flight Training Device:FTD)について詳しくお話しします。

① FTD(Flight Training Device)を訓練で使う理由

FTDはあくまでも航空機を模擬した操縦訓練装置です。実際の航空機ではありませんからFTDによる操縦訓練は、実機を用いた訓練よりも劣っていると考える方もいらっしゃるかもしれません。でも、それは大きな間違いです。むしろ実機ではできない訓練ができるという点で、訓練用の機材としては実機よりも優れていると考えるべきです。例えば...

1. 起こり得る航空機の障害を意図的に生じさせることにより緊急事態への対処方法を学ぶことができる(実機で故意にシステム障害を起こすと危険な場合がある)

2. 離着陸可能なギリギリの気象状態や悪天候時の機体の挙動を模倣できる(実際の気象状態を故意に変えることは不可能である)

3. 訓練上の課題が見つかった場合、その課題を繰り返し再現し訓練できる(実際の飛行では外的要因、例えば気象の変化等により同じ状況を再現することはできない)

4. 教官が訓練生を指導する際、必要に応じて飛行を一時停止、あるいは時間を巻き戻して再開できる(実機では不可能である)

5. 飛行の経路や状況を記録し、再生し、自ら確認できる(実機で同じことをやろうとすると高価で特別な装置を機体に積まなければならない)

6. 燃料を消費しないので訓練の時間単価が安い(減価償却費、電気代、整備費用はかかるため無料ではないが実機に比べ圧倒的に安価である)

7. 天候に左右されず訓練が可能である(実機では悪天候時の訓練は避けねばならない)

いかがでしょうか。訓練でFTDを利用する理由がお解りいただけたことと思います。

ところで、これらの訓練はモーション(操縦室全体を前後左右に傾けたり上下に動かしたりする大がかりな装置:前回のブログ参照)がなくても可能です。モーションを付けると、可動部が増え臨場感も高まりますが、その分、故障する可能性も高くなり、かつ整備費用が高額になりがちです。加えて、次項で説明する航空局によるFTDの認定も、よりハードルが高くなることが確実です。


② FTDは航空局の審査を受ける必要がある

FTDを用いた訓練では、その訓練時間を各種技能証明(ライセンス)を取得するために必要な飛行時間(経験)の一部に充当することができます。例えば計器飛行証明(計器のみを利用して飛行するためのライセンス)の取得訓練では、必要な飛行時間の20時間分をFTDで行うことができます(ざっくりとした計算で、実機による飛行時間1時間当たり7万円が必要なら140万円分をFTDの訓練に置き換えることが可能だということ)。

但し、その恩恵を受けるためには、訓練に使用するFTDが国土交通省航空局の審査に合格していなければなりません。つまり、そのFTDがパイロットの養成において、実機と同程度に有効であると国に認められる必要があるのです(これが、娯楽用の市販のフライト・シミュレータ・ソフトとの大きな違いです)。

この審査が実に大変で、当該FTDの性能に関する膨大なデータを取得して航空局に提出する必要がある他、国の航空従事者試験官による認定も受けねばなりません。モーションが付いていれば、その臨場感(動きがスムーズで実機の感覚が再現されていること)も審査の対象です。しかも、初回の審査後、国のお墨付きを得て使用し続けるためには、1年毎にその間の利用・整備の状況を報告し定期的な審査を受ける必要があるのです。

※国土交通省航空局の最新の「模擬飛行装置等認定要領」はこちら

この認定を受けるための人的労力の大変さや事務手続きの煩雑さを考えれば、民間航空操縦士訓練学校のFTDにモーションが付いていない理由がお解りでしょう。付いていなくても訓練に支障がない以上、無駄な労力を必要とするモーションはFTDに不要です。これが民間航空操縦士訓練学校のFTDにモーションを付けない理由なのです。


③ FTDは組み立て式

かたい話はこれくらいにして民間航空操縦士訓練学校が実際に導入するFTDの紹介をしましょう。このFTDは組み立て式。もちろん、すべてのFTDは組み立て式ですが、その組み立てを、私と研修を受けた整備士さんとで行うのです。ベース・ユニット(主装置)が次の写真。

PFD(Primary Flight Display:左側)とMFD(Multi-Function Display:右側)
PFD(Primary Flight Display:左側)とMFD(Multi-Function Display:右側)他、各種の操作スイッチが並んでいる
 
ベース・ユニット裏側の写真
ベース・ユニット裏側の写真。アルミのフレーム(骨組み)で全体が支えられているのが解る。ケーブルも多いが驚くほどではない。かたわらの箱にAntecの文字が見えるが、PC自作派の方なら思わずニヤリとするに違いない

ラダー(方向舵)ペダルは足下にユニットごと挿入して据え付けます。

ラダー・ペダルを組み込んだところ
ラダー・ペダルを組み込んだところ。一見粗末な作りに見えるが...
 
スプリング荷重によりラダーの動きの重さが模倣される
見て解るとおりスプリング荷重によりラダーの動きの重さが模倣され、同時にブレーキ(ペダルの上方を踏み込む)の強さ(踏み込む角度)をセンス(検出)するトランスデューサ(動きを電気信号に変換して送信するセンサ)が組み込まれている。これらのアナログ的な装置は、室温の影響を強く受けるためFTD室は温度管理する必要がある

据え付けた後、アルミ・フレームにねじ止めして固定し、必要なケーブルを接続します。写真の左側が弊社の整備士さん、右側が導入サポート・マネージャのAllenさん。組み立て方を詳しく説明して下さいました。

二人とも小柄ではあるが、その体躯と比較してもFTDのコンパクトさがよく解る
二人とも小柄ではあるが、その体躯と比較してもFTDのコンパクトさがよく解る

6枚のディスプレイ・パネルを取り付け、筐体で覆った完成形が次の写真です。REDBIRD社名の後に「LD」の文字が付いています。そう、このFTD(AATD)は、REDBIRD社が販売するAATDの「LD」と呼ばれる機種なのです。

REDBIRD LD
この写真でも、只野校長、整備士さん、Allenさんの身長と比較すれば、REDBIRD LDがいかにコンパクトであるかが解る

このREDBIRD LDの詳細は下記のリンクで読むことができます(英文)。

※Redbird Flight Simulations:REDBIRD LD の詳細はこちら

民間航空操縦士訓練学校が導入するFTDは、訓練生にとって必要十分な性能と機能を有しています。また、非常に安価で、訓練生の経済的負担を軽減する重要なキー・アイテムでもあります。

民間航空操縦士訓練学校では、最新の訓練装置を導入することにより、高品質でありながら経済的な訓練を提供します。シーラス社のSR20を訓練機に選んだ理由もそう。

お金をかければ良い訓練が提供できる。正直なところ、それは事実です。でも、誰もが高額な訓練費用を負担できるわけではない。できるだけ安価で、かつ必要十分な訓練を提供すること... それが、一人でも多くのパイロットの卵たちに門戸を開くことになるのだと。

民間航空操縦士訓練学校のフィロソフィー(哲学)はFTDの選定においても変わりません。私たちは、空をもっと身近に感じて欲しい、現実の職場として選ぼうとする若い人たちにチャレンジして欲しい、そう願っています。

次回は、このFTDに電源を入れ、実際に動作させた模様をお話します。6枚のパネルに映し出された景色には驚きました。ご期待下さい。


民間航空操縦士訓練学校

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