
最後までお読み下さり、ありがとうございます。運航本部長の山口です。いよいよ今回が最終回。これまでのお話しで、民間航空操縦士訓練学校が導入する操縦訓練装置(フライトトレーニング・デバイス/Flight Training Device:FTD)についてはご理解いただけたのではないでしょうか。
① BATD(Basic Aviation Training Device)
連載1回目で、民間航空操縦士訓練学校が導入するFTDは、正確にはAATD(Advanced Aviation Training Device)であるとお話しました。このAATDという名称はFAA(米国連邦航空局)による飛行訓練装置(ATD)の基準(AC61-136A)で使われる言葉であって、日本国ではFTD(模擬飛行装置等)が該当します。
ところでFAAの基準にはBATDという装置も存在します。どちらも操縦訓練に使用できますが、BATD(Appendix 2)とAATD(Appendix 3)では、飛行時間(経験)に充当できる時間や適用可能な訓練の範囲が異なります。
※FAA Advice Circular 61-136A:FAA Approval of Aviation Training Devices and Their Use for Training and Experienceはこちら
REDBIRD社はBATDも販売しています。それが下の写真。
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REDBIRD TD2で遊ぶ只野校長(笑 |
このBATDはMicrosoft Flight Simulator Xを元に開発されており、写真のようにオプション(左右のディスプレイとラダー・ペダル)を追加しても$13,000程度。個人でも購入できる価格帯でありながら操作感覚も良好、かつ臨場感たっぷりで、只野校長もご満悦の様子。
※Redbird Flight Simulations:REDBIRD TD2 の詳細はこちら
日本では、残念ながらFTDとしての認定を得るのは難しく、娯楽にしか使えないかもしれませんが、本来FAAが飛行訓練装置として認めているBATDだけあって、自家用機オーナーなどが自主的な訓練を実施するには十分です。私も1台、自宅に欲しいところ(笑
難しいFTDの話はこれくらいにして、最後に軽い話題をいくつか...
② エアバスA380
今回の米国出張は、行きはニューヨーク(JFK)経由、帰りはロサンゼルス(LAX)経由のDELTA便でした。その行きのJFKで機内から撮った写真がこれ。
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エールフランスのA380。総二階建てでさすがに大きい |
よくもまぁ、こんな巨大な飛行機を作る気になったものだと感心するやら呆れるやらで、加えて、こいつを某国内航空会社は本気で飛ばすつもりだったのかと思うと、つくづく身の丈を超えた事業拡大は破綻の元だと実感したのでした。
③ テキサス州議会議事堂
この立派なテキサス州議会議事堂がオースチン市街に立っています。全米で最大の州議会議事堂なんだとか。
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運良く夜間ライトアップされていました |
あまりにも遠いオースチン市なだけに、このために訪米しようと考える方はいらっしゃらないとは思いますが、何かの折に行くことになったら、ぜひ訪問してみて下さい。
④ 音楽の街オースチン
オースチン市は音楽の街でもあるんだそうです。ライヴ好きの私としては、行かない訳にはいかない。深夜2時までやっていると聞いて、3人でダウンタウンに繰り出しました。軽く食事を済ませて、後はパブでビアやカクテルを飲みながらグルーヴに浸ったのが、この出張での唯一の遊び。
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スタンダードなアメリカン・ロック、ポップスを演奏していた5人組のグループ。通りのほとんどのパブでライヴが行われていました |
しかし、テーブル・チャージやミュージック・チャージなしでライヴを愉しめるとは思いもしませんでした。結局、払ったのはチップの数ドルのみ。
⑤ コウモリの街オースチン
オースチン市はコウモリの街でもあるんだそうです。オースチン市街の川に架かる橋には100万匹以上のコウモリが住んでいて、これが大移動する日があるのだとか。あいにく、コウモリは留守にしていたようで、一匹も見ることはできませんでした。
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バットの複数形でバッツ。言われてみればそうなのですが、初めて耳にした時は何のことかと(笑 |
海外出張で何のトラブルもない、ということがない、というほどトラブルには慣れています(荷物が行方不明になる、など)が、帰りのオースチン空港の出発が、機材故障で4時間遅れになったのには参りました。ロサンゼルス空港で、予定していた乗継便に間に合わず、同日の他の便(羽田行き)に振り替えられたのは良かったものの、8時間近くを空港内で過ごす羽目に。
結局、オースチンのホテルをチェックアウトして自宅に帰り着くまで、約30時間もかかったのでした。いやはや。
今回のREDBIRD社での研修は、収穫の多い出張でした。民間航空操縦士訓練学校が導入するFTD(AATD)には、国土交通省航空局による認定取得において幾つかの課題があります。これらの課題をREDBIRD社と共有できたこと、また協力体制を築き上げられたことは、研修でFTDについて学んできた以上の価値があります。
遅くとも8月上旬にはFTDの部品一式が鹿児島に届きます。組み立てるのを今から楽しみにしています。
4回に亘る連載に最後までお付き合い下さり、ありがとうございました。