
みなさん、こんにちは。運航本部長の山口です。いつも当ブログにお付き合い下さり、ありがとうございます。
さて、民間航空操縦士訓練学校の訓練生は、1ヶ月の座学を経て、いよいよ実機訓練に臨みます。実科教官も気を引き締めていることでしょう。いくらイメージトレーニングなどのフライト準備をさせていても、正直な話、訓練生は初めて実機に乗ると緊張してしまい頭が真っ白になってしまうものです。
かつて30年前の私もそうでした。「いいから操縦桿から手を離せっ!」 と怒鳴られ、殴られたことも数知れず。安全を維持するために仕方なかったのでしょう(今は殴ったりしないハズです。きっと… 笑)
そう、安全… 訓練を含む航空機の運航は「安全にも安全を期して」実施しなければなりません。一方で、操縦訓練は訓練ですから、一定程度の危険性を孕んでいることもまた事実です。ベテランパイロット2名で飛行する旅客機と、素人と教官2名で飛行する訓練機と(本来、比較の対象にすべきではありませんが)どちらが、より安全か? と問われれば、答えは明らかでしょう。
だからといって、飛行訓練が危険だということではありません。いやいや、旅客機よりは危険だろう?、いやいや、運航の仕組み自体が違います、いやいや、同じ飛行機ではないか、いやいや、訓練の科目は安全を損ないません、いやいや、低速で飛べば…
こうなると、もう言葉の定義が違うとしか言いようがありません。安全と危険は裏表の関係にあるのではなく、ひと繋がりの連続した概念です。つまり程度の問題だと言い換えることができます。
車で高速道路を時速100キロで走る場合と、混雑した一般道を50キロで走る場合のどちらがより安全か(逆にどちらがより危険か)? という問いと同じです。一般的には、高速道路の方が安全だという回答が多いでしょう。
では、高速道路を時速200キロで走る場合は? いや、それはそもそも日本においては違法だし… という話は置いておいて、さすがに200キロなら危険なのでは? あるいは「車に依る」とか「状況に依る」という回答もあるでしょうね(とても空いている直線道路で、天気も良く、動力/空力性能に優れた車で走っている場合を想定してみて下さい)。
いや、そもそも何に対して危険だと問うているのだ、対人事故を起こす可能性で言うなら、たとえ200キロだろうが、高速道路の方が安全に決まっている!
その通り。何に対する「安全性/危険性」なのか、ただ漠然と「安全」とか「危険」とか、私たちは考えがちです。でも、安全や危険とは、本来、ある対象(ここでは人命)や状況(ここでは飛行訓練)を想定し、その範囲で具体的に考えなければ考察のしようがない。
安全や危険などといった言葉は、なんとなく使えそうでいて、実はそうではない。ただ漠然と安全第一と唱えているだけでは、安全性の向上など図れるわけがない。
具体的な措置を講じて、且つ、その措置を実施し、効果を確認し・・・いわゆるPDCAのサイクルを行うことで安全が維持され向上されるのではないでしょうか。
民間航空操縦士訓練学校の訓練は、その範囲において、過去の多くの経験に基づく訓練方法により十分に安全といえる体制の下に行われます。規程類、整備の体制、教官の訓練、運航管理の体制等々、出来うる限りの安全対策を具体的に講じています。
鹿児島フライトトレーニングセンターでは、これがJGAS品質だと、誰からも信頼されるような安全な訓練を提供して参ります。
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