
みなさん、こんにちは。JGAS鹿児島フライトトレーニングセンター 運航本部長の山口です。いつも当ブログをお読みいただき、ありがとうございます。
弊社の民間航空操縦士訓練学校は、プロ・パイロットを目指すための訓練所です。単に操縦ライセンスを取得させる(飛行機を操縦できるようにする)訓練所ではありません。
このようにお話しすると、何が違うの? そう思う方もいらっしゃるに違いありません。ライセンスがあれば、飛行機を飛ばすことができれば、プロ・パイロットになれるのではないか。そのために、高いお金を払って事業用操縦士や計器飛行証明、航空英語能力証明などの資格を取得するのではないか。少なくとも自家用操縦士資格を取るだけのために訓練を受けているわけではないのだから。
そう、事業用操縦士や計器飛行証明などの資格は、プロ・パイロットになるための必要条件です。これらを取得しなければ、そもそもお話しにならない。それはその通りです。
でも、操縦士資格の取得は、決してプロになるための十分条件ではない。飛行機は飛ばせるかも知れないがプロ・パイロットにはなれない。資格を取りさえすればエアラインに行ける… そう思っている訓練生がいたら、今すぐその認識を改めること。認識を改めることができなければ、貴方は決してプロにはなれません。
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こうして訓練生自らも愛機を磨きます。機体の状態を把握する大切な訓練の一環でもあるのですが、愛着がわくのも事実ですね |
では、プロになるための十分条件とは何なのか? 具体的に、何を、どのように学べば、その条件を満たすことができるのか?
答えは簡単ではありません。それは、個別の課目として教えられるものではないから。机に座って、黙って授業を聴いていれば身に付くものではないから。
プロとして飛ぶための高度な要件は、もちろん日々の訓練の中で、教官からの高度な要求を満たそうとする訓練生自らの努力によってしか満たすことができません。そして、プロとそうでない者とを分ける違いは、その過程で自然に身に付くもの、結果として得られるもの、だとしか定義できません。
これは逆説的な物言いに聞こえるかもしれませんが、プロになる要件は「プロを目指す訓練によって結果的に身に付くもの」だと言っているに等しい。
安全に対する真摯な姿勢、仲間と助け合って目標を達成しようとする共助の気持ち、その他、航空界で一般に言われるエアマンシップと呼ばれるものは、全人教育などと呼ばれる手法によって身に付く、身に付けさせることができるほど簡単なものではありません。もちろん、当たり前の社会性が前提にあることは否定しませんが、単に挨拶をしよう、とか、丁寧な言葉遣いをしよう、などといった標語を並べることによって教えられるものではない。
何よりも大切なことは、自分を取り巻くありとあらゆる事象について、興味と疑問を持ち、深く考え、自分なりの答えを見出し、それを訓練の中で試行し、失敗し、悩むこと。絶えず、休まず、いつもいつも考え続けること。
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外山滋比古著「思考の整理学」-やや古い本ですが、私の座右の書。訓練生にも配布しています。自分で考えることの楽しさを学んで欲しいという意図からです |
プロになるための訓練とは、ただやみくもに操縦を、航空を、学ぶこと(知識を詰め込み、腕を磨く)だけではありません。幅広い知識、雑多な課題を自分なりに理解する洞察力、多角的な視点と思考の柔軟性、そしてこれらを愉しむ心のゆとり。
難しいことじゃない。笑って泣いて、楽しんで苦しんで、飛んで、飛んで、飛んで… 遊べ。
僕は、私は、プロになる! そのために、今、訓練を受けている。プロとは何か、プロになるとはどういうことか、自分に足りないものは何か、今何をしなければいけないのか。
考え続け、悩み続けなさい。その先に、プロ・パイロットが見えてくるのです。
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