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君子危うきに近寄らず

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君子危うきに近寄らず

今日も運航ブログにお付き合いいただき、ありがとうございます。JGAS鹿児島フライトトレーニングセンター 運航本部長の山口です。

私が個人的に… ではあるけれど、座右の銘のひとつにしている言葉に、今日のタイトル「君子危うきに近寄らず」があります。プロ・パイロットを目指す訓練生には、是非、知っておいて欲しい、日々の生活の中においても実践して欲しい、そんな言葉です。

TEM(Threat and Error Management)という言葉

スレット・アンド・エラーマネージメントと言いますが、このTEM(テム)。よくCRM(Crew Resource Management:クルー・リソース・マネージメント)とセットでTEM&CRM(テム・アンド・シーアールエム)と呼ばれます。

スレットとは、運航の現場では「エラー(失敗)を誘発する脅威・要因」のことを意味します。スレットをいち早く認識して、それを取り除く、あるいはスレットに正しく対応することで事故を未然に防ぐ、など、航空の現場において、TEMは安全性を向上させる有効な手法です。

ちょっと想像してみて下さい。あなたは予約した定期便に乗るため、自家用車で空港に向かっているとしましょう。車を運転しているあなたは、家を出た直後にチケットを部屋に置き忘れたことに気付きます。家に引き返せば出発に間に合わないかもしれない、戻るべきか、このまま空港に向かうべきか、あなたは逡巡します。乗れなかったらどうしよう… 頭はチケットのことで一杯です。

つい運転が疎かになって、一時停止の標識を見落としてしまいました。運の悪いことに、たまたま警察官に見つかってしまいます。「はい、運転免許証を出して… 一時停止違反だよ…」。あなたは「いや~、すいません、空港に向かっていて急いでいて… 反則金は払いますから、手続き急いでもらえませんか?」と、時計が気になって仕方ありません。

もう家に戻る余裕はない。まっすぐ空港に向かっても定刻ギリギリにしか着けない。ついつい、スピードを出し過ぎてしまい赤信号も見落としてしまいました。あ! 急ブレーキをかけましたが、あなたの車は止まりません。ついに歩行者をはねてしまい…

想像もしたくない事態ですが、この事故には複数のスレットが存在していたことが解ります。挙げてみて下さい。

そもそもの発端はチケットを部屋に置き忘れたこと。この事実に気付いてしまったこと自体がスレットですが、それを気にして色々と考えてしまったこともスレットです。警察官に停められたこともスレットですし、スピードを出し過ぎたこともスレットです。事故へと繋がる数々の脅威・要因が連鎖して事故へと繋がってしまったのです。

チケットを忘れたことをスレットだと認識していたら、意識はどう変わっていたでしょうか?今、大切な事は安全に運転すること、予約便に間に合わなくても、まぁ、何とかなるさ、と開き直っていたらどうだったでしょう。自分は慌てているかもしれない、いつも以上に冷静に運転しなきゃ、と自分自身に言い聞かせていたらエラーの連鎖は止められていたかもしれません。

精神論で事故は防げないが、意識の持ち方次第で事故は防ぐことができる

安全第一、安全第一、と、どんなに声高に連呼しても安全は確保できません。安全を脅かす要因を日頃から想定して予め対処しておく、事前の予防ができなかった場合でも代替策に瞬時に切り替える、など、TEMは日常生活においても有効な考え方です。

私だったら、そもそも空港に自家用車で行こうとは思いません。予測不能な事態が生じる可能性が少ない公共交通機関を選択します。航空券のネット予約が主流の現代において、チケットはスマホに保存しますし、仮にスマホを忘れたとしても、空港カウンターで予約状況を確認してもらい搭乗券を発行してもらうことも難しくありません。もちろん、時間はかかるでしょうから、十分な余裕をもって空港に到着するようにします。これらは、スレットを予防する方策だといえます。

何らかの事情で、どうしても車で行かなくてはならないとしたら… 公共交通機関を使う場合よりも、より多くの時間的余裕を持って移動を開始しますし、場合によっては(お金はかかるけれど)自家用車ではなくタクシーを使います。スレットを避けるためです。

では、チケットではなくパスポートを忘れたのだとしたら… 家に引き返してパスポートを持参しない限り出国すらできませんし、もちろん予約便に乗ることもできません。このような事態に陥ってしまったら、自分はスレットを抱えている… 急いで引き返せば間に合うかもしれないが交通事故を起こす可能性もある… と認識することが大切です。慌てること、と、冷静に急ぐこと、との間には雲泥の違いがあります。

頑張って、急いで、それでも間に合わない! と焦ったら、もう開き直ることも大切です。焦ったところで事態は改善しない、予約便に乗れないのは仕方ない… 次の便で目的地に向かうことにしよう! あるいは、もう行くのは諦めよう! と考えるのもスレットに対する対処の方法です。予約便に間に合うことよりも事故を起こさないことを優先する、この意識の切り替えこそが安全性を大幅に向上させるのです。

危ないことには近づかない

日々の生活の中でも、事故を未然に防ぐためには、自分なりの安全策を常に意識しておくことが必要です。また、ある目的を果たすために複数の選択肢があるのなら、その時々の状況に応じた最適解を見いだせるよう、十分かつ正確な情報を事前に収集しておくとともに、正しい知識を身につけておくことも重要です。

そもそも予測可能な危険を伴う状況、何らかの無理を強いる状況… には近寄らないことが一番です。スレットをスレットとして認識し、予めそれらを避けられるのであれば、そのようなリスクは冒さないに越したことはない。

プロたる者、一定のリスクを背負わなければ仕事はできないけれど、不要なリスクを抱えることは避けなければなりません。

君子危うきに近寄らず… プロ・パイロットとして必要不可欠な態度だと私は考えています。

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