
先日、弊社が代理店を務めるテクナム社のイタリア・カプアにある本社工場で「P2012トラベラー」の試験用1号機が完成しました。
現在開発中のテクナムP2012トラベラーは、最大11席の小型飛行機です。
350馬力のピストンエンジン「Lycoming TEO-540-C1A」を2基搭載した高翼機で、旅客/貨物輸送のほか、航空測量などの用途での需要も見越しています。
航空機用のエンジンに詳しい方は「TEO」って何だろう?と思われた方もいるかもしれません。
これは、水平対向(O)、ターボチャージャー(T)、そしてFADEC装備(E)という意味です。
FADECは、Full Authority Digital Engine Controlの略で、日本語では「全デジタル電子式エンジン制御装置」とでも言いましょうか。すなわち、これまでスロットルレバーからケーブルを介してエンジンを制御していたものを、デジタルコントロールしようというものです。スロットルレバーの角度をシグナルでFADECへ送り、FADECがエンジンを制御するのです。
FADECが最初に導入されたのは、ジェットエンジンですが、いよいよ航空機用ピストンエンジンにも取り入れられました。
P2012トラベラーは、テクナム社の他の航空機と同様に、低コストで運航できることが売りの機体です。このFADECもエンジンの燃料流量を細かく制御することで、低燃費に貢献しています。
トラベラーには、航空用ガソリン(100LL)のほか、それよりも安価な自動車用ガソリン(ハイオク)が使用可能です。
*日本国内でハイオクガソリンを使用するためには、製造メーカーの承認が必要です。(ASTM,EN規格は承認済)
また、シンプルで整備が容易なことを基本方針として設計されており、例えば、固定脚を採用することで整備コストを大幅に削減しています。
性能としては、以下の数値を実現する予定です。
最大有効積載量:1202kg (約2600lb)
巡航速度 :高度10,000ftで177kt
最小操縦速度:74kt
最大航続距離:650nm (約1200km) 以上
離陸距離:561m
着陸距離:506m
※開発中のため、性能・装備等は変更になる場合があります。最新のデータにつきましてはお問い合わせください。
P2012トラベラーの開発に当たっては、アメリカ東海岸のリージョナル路線や、グアム・カリブ海などの島間路線を運航するケープエアーが協力することになりました。多数の小型機を運航する同社が協力することにより、運航者のニーズに合った航空輸送機の開発が期待されます。
そして、テクナム社の航空機は、様々な用途に合わせて改造できることで定評があります。
例えば、弊社が現在取り扱っているP2006Tは、オーナー機や訓練機として使用されているほか、航空測量機、哨戒機、NASAの実験機としても活躍しています。
P2012トラベラーも同様に、航空輸送の枠にとらわれない運用が見越されています。特に航空測量には最適の機体ではないでしょうか。
P2012トラベラーは、FAR part 23及びEASA CS-23に準拠するよう設計されるため、将来的には弊社でも取り扱いを開始する予定です。2019年のデリバリー開始を目指して現在開発が進んでいますので、近い将来、トラベラーが日本の空を飛ぶ日が来るかもしれませんね。
続報が入り次第、お伝えいたします!